障害学とは何か——障害を社会と文化からとらえなおすための入門講座
開講期間: 2026年7月11日 〜 2026年9月26日
隔週土曜日19:00~20:30(一部休講週あり)
難易度: 入門※ 難易度についてはこちらを参照ください。
受講者募集中
事前募集期間2026年7月4日 21:00 まで
授業回数6 回
現在の申込数3名(最低開講人数: 10)
※ 事前募集期間中にお申し込み数が最低開講人数に達しなかった場合は不開講となります。
内容紹介
といっても、「障害学とは何なのか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。もう少し具体的に言うと、「障害の医学的な側面よりも社会的・文化的な側面を探求する学問」ということになります。
世の中には、医学的・リハビリテーション的な観点から特定の障害についての治療などを研究・実践する「○○障害学」と呼ばれる分野がたくさんあります。たとえば、「視覚障害学」といった分野があります。これは、視覚障害のある人への医学的治療などを扱う学問ということになります。
その一方で、この講座で学ぶのは「障害学」の漢字三文字の学問です。個別の論文や書籍では、特定の障害を扱うことも多いですが、 「障害」全般を私たち人間が、あるいは社会がどのように考えるか、に焦点を当てていく学問 です。
近年、障害者の社会参加がよりいっそう強調されるようになりました。国際連合による障害者権利条約を受けて日本でも法整備が進んでいます。障害のある子供とそうではない子供がともに学校で学ぶことの必要性が強調されるようにもなり、障害者の雇用も少しずつ進んでいます。
しかし、そのような動きが出るまでには世界的に考えても時間がかかりました。アメリカやイギリスでは1970年代に障害者の社会参加を求める運動が盛んになりました。日本においても、1950年代から、障害者の権利を求める運動が様々発生し世間の注目を集めてきました。
本講座では、障害に何らかの形でかかわる人たち——専門職、あらゆる分野の職業人、医学・福祉・教育などの分野を学ぶ学生、そして障害を持つ人とその家族——の人々が、「障害」を社会や文化の側面からとらえるための基礎知識を学びます。
それによって、何が可能になるのでしょうか。最も大きいのは、障害を「社会がつくっているもの」として捉えることが可能になることです。障害を個人のもの、ないし医学的現象としてのみとらえることを「個人モデル(医学モデル)」といいます。個人モデルを全否定すべきかについては様々な議論がありますが、本講座ではこのモデルに対抗するモデルとして現れた「社会モデル」を鍵概念として学びます。
社会モデルを軸にすると、例えば障害者の移動について別の視点が獲得できます。ある人が足に機能の制約を抱え、建物の2階に上れない、とします。この人の足にリハビリテーションを施して登れるようにしよう、と考えるのが個人モデルです。一方、建物に手すりやエレベーターをつければ上りやすくなる、と考えるのが社会モデルです。この考え方によって、多くの制度改革や物理的バリアの除去が行われてきました。障害者への差別解消や、「合理的配慮」の考え方も、障害学の思想が反映されたものです。たしかに、障害学的な考え方は社会を変えているのです。
そもそも「障害学」の萌芽について考えると、アメリカにおいては障害者の権利以前にエスニックマイノリティの社会参加を求める公民権運動の基盤がありましたが、1960年代から障害者の自立生活運動が発生しました。イギリスでは、1970年代に身体障害者の権利へのアクセスを求める運動が活発化しました。これらが人文・社会系の学問(イギリスでは社会学が主だったようですが)と結びついて「障害学」が生成されていきました。日本では脳性麻痺者などの当事者運動が1950年代から発生していましたが、学問としてはすぐには体系化されず、海外の研究者や欧米へ留学した日本人研究者、また海外と結びつきのある当事者や実践家などによって紹介された面が強いという状況があります。
以上を踏まえ、本講座は、近年その賛否も含めて議論となっている「インクルーシブな共生社会」を考えるために、障害学がどのようなもので、その思想がどのように使えるのかを考えていきます。本講座では、まず障害学とはどのような学問なのか、また障害・障害者を取り巻く環境を考えます。ついで、イギリス、アメリカ、そして日本における障害学の成り立ちと現状を学びます。そして、近年の障害学理論の展開を概観していきます。
各回内容
第1回目は、障害学の基本的な考え方と、「障害」を巡る日本および世界の現況を概観します。まず、「障害」・「障害者」の概念を障害学がどのように捉えているかについて考えます。「障害の個人モデル(医学モデル)」と「障害の社会モデル」の基本的な解説も行います。次に、「障害」の日本語表記を巡る議論を取り上げます。第2回目は、イギリスにおける障害学の歴史と現在を考えます。イギリスにおける障害学の発生経緯に始まり、イギリスの障害学が現在においてどれほどの影響力を世界に及ぼしているかについても考えます。
第3回目は、アメリカにおける障害学の歴史と現在を考えます。アメリカの障害学を考えるとき、無視できないのは公民権運動とのかかわりです、日本にも紹介された「自立生活運動」の発生についても触れます。更には教育を障害学の観点から捉えなおす「教育の障害学」の発展を含む障害学の学際化についても解説します。
第4回目は、日本における障害学の歴史と現在を考えます。障害者運動の誕生自体は、日本においても新しいものではなかったのですが、学問と結びつくのには時間がかかりました。また、日本における障害学はイギリスやアメリカなどから「輸入」されたものであると理解されている傾向がありますが、その背景と過程についても述べます。
第5回目は、第1回目から4回目までの内容を踏まえ、障害学理論の現在について考えます。障害学の鍵概念として理解されてきた「障害の社会モデル」を再考する動きを踏まえて、新たに提示されている数々の障害モデルの中から「人権モデル」や「文化モデル」などを解説します。
第6回目は、障害学の近年の展開をいくつか例示します。まず、自閉症や注意欠如多動症、学習障害などを神経の多様性の表れとして捉える「ニューロダイバーシティ」を巡る議論をとりあげます。次に、障害学のグローバル化の表れとして、「グローバルサウス」における障害学の動きを概観します。そして、民族や性別、そして階級などの複数属性と障害の交互作用による差別の多層化を議論する「インターセクショナリティ」を巡る議論を解説します。
本講座は、講義中心で進めます。講義は講師が毎回80分程度、講師が作成した資料を用いながら行います。その後最後の10分間で質疑応答を受け付けます。
障害学は、日本の大学でも少しずつ講義がなされるようになっていますが、まだまだ広がりの余地がある学問です。多様性の是非が議論される昨今、ますます重要になる分野であると講師は考えています。ご関心のある方の受講をお待ちしています。
注
※本講座では、「障害」の表記を漢字二文字の「障害」とします。これは、障害者に対する「害」は社会の側にあるというイギリス障害学の考え方を反映させたものです。
※情報アクセシビリティにニーズのある方は、受講申し込み前に お問い合わせフォームよりご相談ください。
※本講座の内容は、過去に同一講師が担当した下記の講座と一部重複しますが、これらの科目の内容が先修要件になるわけではありません。また、これらの講座を受講した人が本講座を受講することを妨げるものではありません。
・ディスアビリティ(障害)とは何か——人文・社会科学的視点から再考する
https://disseminer.jp/courses/18
・障害を規定するのは誰/何なのか——障害学から考える「ディスアビリティ」の諸相
https://disseminer.jp/courses/45
・「ニューロダイバーシティ」から障害と多様性を考える——その当事者性に着目して
https://disseminer.jp/courses/77
※受講者はアーカイブ(録画)の視聴が可能です。リアルタイムで授業に参加できない場合も見逃しなく受講できます。
※途中参加の場合も、全授業のアーカイブ動画をご覧いただけます。
※アーカイブ動画は、最低1年間視聴可能です。
◆受講の流れ◆
1. お申し込み↓
2. 開講&受講の決定
↓
3. リアルタイムで授業に参加/アーカイブを見る/クラスルームから資料にアクセス
◦リアルタイム授業への参加URLは、受講決定時に自動送信されるメールに記載されている他、クラスルーム(下記)、マイページ内「ダッシュボード」からもご確認いただけます。また、各授業日の2日または3日前にリマインダーメールをお送りいたします。
◦講師とのやりとりや資料の配付、講座に関する運営からのお知らせ等は、Google社が提供する学習管理アプリケーション「Googleクラスルーム」から行います。クラスルームにつきましては、受講決定時に別途招待メールが届きますので、そちらからご参加ください。
◦クラスルームの使い方についてはこちらをご覧ください。
◦アーカイブはマイページ内「受講状況」からご覧いただけるほか、本ページ下部の「授業スケジュール」およびクラスルームからもご覧いただけます。
◦ディセミネでの初回受講時に送られる招待メールを承認することで、Googleカレンダーと自動で同期が可能です。是非ともお使いください。

授業予定
障害とは何か、障害者とは何者か、そして障害をめぐる近年の情勢
第2回 2026年7月25日(土)19:00〜20:30
イギリスにおける障害学
第3回 2026年8月8日(土)19:00〜20:30
アメリカにおける障害学
第4回 2026年8月29日(土)19:00〜20:30
日本における障害学
第5回 2026年9月12日(土)19:00〜20:30
障害学理論の現在
第6回 2026年9月26日(土)19:00〜20:30
障害学の近年の展開
※ 授業の進捗等により予定が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
こんな人におすすめ
障害を本人か家族が持っていて、自分や家族のことを見つめなおしたい人
職場やプライベートな関係における障害者と関わりを考え直したい人
ダイバーシティの意味を考え直したい人
医療・福祉・看護・教育など、障害者に関わる勉強や研究をしている人。とくに、卒業論文や修士論文などで障害(者)について書きたい人
講師情報

授業スケジュール
次回開催
2026年7月11日 19:00 〜 20:30
第1回 障害とは何か、障害者とは何者か、そして障害をめぐる近年の情勢
参加可能人数: 無制限2026年7月25日 19:00 〜 20:30
第2回 イギリスにおける障害学
2026年8月8日 19:00 〜 20:30
第3回 アメリカにおける障害学
2026年8月29日 19:00 〜 20:30
第4回 日本における障害学
2026年9月12日 19:00 〜 20:30
第5回 障害学理論の現在
2026年9月26日 19:00 〜 20:30
第6回 障害学の近年の展開
障害学とは何か——障害を社会と文化からとらえなおすための入門講座
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