自己と向き合うための哲学:現象学的思考の力を身につける[形相的還元から実存論まで]

開講期間: 2025年8月31日 2025年11月16日

隔週日曜日19:00〜20:30(一部例外あり)

難易度: 入門〜中級※ 難易度についてはこちらを参照ください。

講義の開催が決定しました

授業回数6 回

受講料12,600 円

受講者数16(最低開講人数: 3)


内容紹介

古代ギリシアの有名な言葉に「汝自身を知れ」というものがあります。だれがどのような意味でこの言葉を発したのかについてははっきりしないところがありますが、不思議なことに、哲学の歴史は、わたしたちが自分自身のことを知る歴史であったと言っても過言ではありません。

ソクラテスによると、わたしたちは、自分の無知を知ることによってこそ、知を愛しもとめる=哲学するのであり、デカルトによると、わたしたちが知の正しさを疑うとき、そのように疑っている自分の存在だけは疑うことができません。これら「無知の知」も「われ思う、ゆえにわれ在り」も、まさに「自分自身についての知」にほかならないのです。

しかし、わたしたちにとって、自分自身を知ることはけっして簡単なことではありません。たとえば、自分自身の気持ちというものを考えてみましょう。わたしたちは「読書は楽しい」と思ったり、「仕事が終わって嬉しい」と思ったりします。そのとき、楽しいや嬉しいと思っているのは自分自身にほかなりません。それにもかかわらず、わたしたちは、「楽しいや嬉しいとはどういうことか?」と問われても、うまく答えることができないのです。

わたしたちは、「読書は楽しい」と思うとき、楽しいと思っている自分自身よりも、読書のほうに関心をもっています。たとえ自分自身に関心をもつ場合でも、「読書を嗜む自分が他人にはどのように見えているのか」というように、他人目線で関心をもっていることが多いでしょう。わたしたちは、良い意味でも悪い意味でも、自分中心ではなく、世界や他人を中心に、ものごとを考えるのに慣れているのです。

ところで、近代の哲学における最大の問題のひとつは「認識」の問題でした。つまり、近代の哲学者たちは「わたしたちはものごとについて正しく知ることができるのか」と問うてきたのです。そして、デカルトやカントのような哲学者たちは、正しい知の可能性を問うには、知の主体であるわたしたち自身について問わなければならない、ということを明らかにしたのです。(デカルトからカントにいたるまでの近代認識論については、以前の講座「知の「正しさ」を問う——近代哲学の精髄・認識論を学ぶ」において取り上げました。必須ではありませんが、先にこちらを受講していただくと、今回の講座も、よりいっそう深く理解できると思います。)

そのような認識論の到達点のひとつが、エトムント・フッサール(1859–1938)の現象学です。従来の哲学者たちとフッサールとの決定的なちがいは、「あるがままの現実が存在する」ということを当たり前のこととして考えるか、そうでないかという点にあります。

従来の哲学者たちは、まさに「あるがままの現実が存在する」ということを当たり前のこととして考えたうえで、つぎのように知の正しさを理解してきました。つまり、わたしたちの知は、あるがままの現実に一致することによって、正しくなる。たとえば、わたしたちが「運命は存在する!」と思い(=知)、そして、ほんとうに運命が存在する(=現実)ならば、「運命は存在する」という知は正しいことになります。

それに対して、フッサールは、「あるがままの現実が存在する」ということを当たり前のこととして考えるのを止め、現実とはわたし(たち)が確信として作り上げているものだと考えるのです。これによって、フッサールは認識の問題において突破口を開いたのです。

わたしたちは、自分が感じたこと、考えたことこそが正しいと思ってしまうことがあります。たとえば、色の見え方には個人差があるとされていますが、わたしたちは、「自分に見えている色や世界こそがほんとうだ」と思いがちです。あるいは、人生や世界の意味について深く考えたことのあるひとは、自分の考えたことこそが真実だと思うかもしれません。

フッサールはそのような「あるがままの現実」や「ほんとうの世界やその意味」が存在するのかどうかを肯定も否定もせず、どうしてわたしたちはそれらの存在を信じているのかを明らかにしていきます。世界や現実について知ることは、自分自身について知ることと切り離すことができないのです。

フッサールの現象学の特徴は、あえて一人称的な立場から、つまり、自分目線で考えるという方法を徹底することにあります。そして、現象学の面白みは、その方法が、さまざまな事象に応用可能であるということにあります。

たとえば、「どうしてわたしたちは運命の存在を信じる/信じないのか」という問題について現象学的に考えることもできます。つまり、運命というものが存在するのかしないのかを決定しないまま、「運命の存在を信じる/信じないわたしの意識において、どのようなことが起っているのか」と考えるのです。

この講座では、以上のような、フッサールを中心とした現象学を取り上げます。

まず、現象学が登場することになった背景と理由をしっかりと理解するために、デカルトとカントを中心とした近代認識論を振り返ります。

つぎに、フッサールについて、かれの現象学のもっとも重要な方法である「形相的還元」と「超越論的還元」に焦点を当ててお話します。また、それらの方法を応用して、楽しみと喜び、そして、運命について現象学的に考えてみましょう。

楽しみと喜びについては、フッサールの初期の弟子であり、現象学的美学で知られるモーリッツ・ガイガーの現象学的な享受論を参照します。

最後に、フッサールの中期の弟子で、もっとも有名な現象学者のひとりであるマルティン・ハイデガーの現象学的な実存論(いわば人間論)を紹介します。

わたしたちにとって自分自身は、もっとも近い存在であるはずなのに、もっとも遠い存在であるようにも思われます。だから、わたしたちは、だれか心理学者や占い師に「あなたはこういう人間だ」と言ってもらいたくなることがあります。

しかし、わたしたちが「読書は楽しい」と感じたり、「運命は存在する」と考えたりするとき、そう感じ、考えているのは、ほかならぬ自分自身です。だから、そのような自分自身をもっともよく理解してあげられるのも、ほかならぬ自分自身なのではないでしょうか?

現象学は、まさに自分自身のことを、自分自身の目線で理解することを得意としています。現代は、自己を表現する力が求められる時代ですが、自己を表現するためには、なによりもまず、自己を理解してあげなければならないはずです。現象学をとおして、わたしたちが自分の存在や気持ちを、どのように感じ、どのように考えているのかを探究して、自己を理解し、表現する力を身につけましょう!

※受講者はアーカイブ(録画)の視聴が可能です。リアルタイムで授業に参加できない場合も見逃しなく受講できます。
※途中参加の場合も、全授業のアーカイブ動画をご覧いただけます。
※アーカイブ動画は、講座の受付終了から1年間視聴可能です。


◆受講の流れ◆

1. お申し込み

2. 開講&受講の決定

3. リアルタイムで授業に参加/アーカイブを見る/クラスルームから資料にアクセス

◦リアルタイム授業への参加URLは、受講決定時に自動送信されるメールに記載されている他、クラスルーム(下記)、マイページ内「ダッシュボード」からもご確認いただけます。また、各授業日の2日または3日前にリマインダーメールをお送りいたします。

◦講師とのやりとりや資料の配付、講座に関する運営からのお知らせ等は、Google社が提供する学習管理アプリケーション「Googleクラスルーム」から行います。クラスルームにつきましては、受講決定時に別途招待メールが届きますので、そちらからご参加ください。

◦クラスルームの使い方についてはこちらをご覧ください。

◦アーカイブはマイページ内「受講状況」からご覧いただけるほか、本ページ下部の「授業スケジュール」およびクラスルームからもご覧いただけます。

◦ディセミネでの初回受講時に送られる招待メールを承認することで、Googleカレンダーと自動で同期が可能です。是非ともお使いください。

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授業予定

第1回 2025年8月31日(日)19:00~20:30


近代認識論を振り返る


第2回 2025年9月14日(日)19:00~20:30


やっぱりぜんぶ夢ってこと?:フッサールの現象学(1)


第3回 2025年9月28日(日)19:00~20:30


楽しみと喜びの現象学:ガイガーの享受論


第4回 2025年10月19日(日)19:00~20:30


わたしが世界を組み立てる:フッサールの現象学(2)


第5回 2025年11月2日(日)19:00~20:30


運命の現象学:体験談にもとづいて


第6回 2025年11月16日(日)19:00~20:30


わたしらしくあるために:ハイデガーの実存論

※ 授業の進捗等により予定が変更になる場合がございます。予めご了承ください。

こんな人におすすめ

哲学、現象学をはじめて学ぶ人、学び直したい人
常識にとらわれている人、不信感をもっている人
自分の力でものごとについて考えられるようになりたい人

講師情報

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峯尾幸之介

哲学・美学——特にミュンヘン現象学派のモーリッツ・ガイガーを中心とする現象学と現象学的美学

講師情報の詳細を見る ▶


授業スケジュール

  • 次回開催

    2025年8月31日 19:00 〜 20:30

    第1回 近代認識論を振り返る

    参加可能人数: 無制限
     
  • 2025年9月14日 19:00 〜 20:30

    第2回 やっぱりぜんぶ夢ってこと?:フッサールの現象学(1)

     
  • 2025年9月28日 19:00 〜 20:30

    第3回 楽しみと喜びの現象学:ガイガーの享受論

     
  • 2025年10月19日 19:00 〜 20:30

    第4回 わたしが世界を組み立てる:フッサールの現象学(2)

     
  • 2025年11月2日 19:00 〜 20:30

    第5回 運命の現象学:体験談にもとづいて

     
  • 2025年11月16日 19:00 〜 20:30

    第6回 わたしらしくあるために:ハイデガーの実存論

     

自己と向き合うための哲学:現象学的思考の力を身につける[形相的還元から実存論まで]

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