日本の喫茶文化を知る——歴史的文献の読解を交えて(煎茶編)

開講期間: 2024年04月10日 2024年06月05日

入門★☆☆

※ この講座はすでに終了しており、アーカイブと資料のみのご提供となります。リアルタイムでの授業や質問の受付などはありませんのでご注意ください。

アーカイブ動画公開中

講義回数5 回

受講料9,800 円

受講者数46


内容紹介

★★イベント開催のお知らせ★★

大正期に開催された大規模茶会である「東山大茶会」について、その舞台の一つとなった国指定の名勝・無鄰菴で実際に煎茶を喫し、当時の茶会を追体験しながら学びませんか?

茶の湯と煎茶の歴史の交差点でもある「東山大茶会」。その特異な姿を、様々な歴史的資料から後付けます。その後、講師が茶人として皆様に煎茶をふるまい、茶話会の場を設けます。茶文化について、また日頃の学びについて歓談しながら、学びを深める機会を創ります。

◎担当:島村幸忠講師
◎日時:6月30日(日)
◎場所:無鄰菴(京都市左京区) https://murin-an.jp
◎会費:3000円(煎茶、茶菓子付き) 90分(講義50分+茶話会40分)
◎申込締切:6月28日(金)

☆詳細&申込みはこちらまで☆
講座を受講していない方もご参加いただけます。
https://disseminer.notion.site/caebf3acc70b4e9181126d66d170f3d6

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世の中にはさまざまな飲み物がありますが、日本に住む者にとってもっとも馴染みのある飲み物は、やはり「お茶」ではないでしょうか。飲食店に入ればしばしばお茶が出されますし、お茶を用いたスイーツも多く販売されています。ペットボトルのお茶を購入される方も少なくないでしょう。

このように日本に住む者にとって身近な存在のお茶ですが、その歴史についてしっかりと知っているという方はそれほど多くいないように思います。

例えば、栄西とか、千利休といったような喫茶文化にまつわる歴史上の人物の名前を耳にしたことはあるかと思います。しかし、実際に彼らは何をしたのでしょうか。あるいは、茶の湯で喫される抹茶ではなく、急須を用いて淹れる煎茶はいつ頃から飲まれるようになったのでしょうか。また、煎茶はどのような人に嗜まれていたのでしょうか。あるいは、歴史に名が残っているような有名な人物ではなく、庶民はいつ頃からお茶を飲むようになったのでしょうか。

確かに、これらのお茶にまつわる知識は、インターネットで検索したり、日本文化に関する概説書をひもとけば、ある程度は得ることができます。ただし、それらには、近年の茶文化研究の成果がいまだ十分に反映されているとは言えません。

例えば、以前は、栄西が抹茶を中国よりもたらしたと言われていました。しかし、現在はそのようには考えられていません。あるいは、利休の師は武野紹鴎たけのじょうおうという人物であると考えられていましたが、いまはそのようには考えられていません。他にも、「わび」や「和敬清寂」などが、ときに利休が唱えた言葉として紹介されてきました。しかし、そのような事実はありません。

この講座では、茶文化研究の成果を参照しつつ、いま現在も書き換えられ続けられている、新しい日本喫茶文化史の全体像を把握することを目指したいと思います。

今回の「煎茶編」では、煎茶文化についてお話しします。

多くの方にとっては、茶の湯で喫される抹茶よりも、急須を用いて淹れる煎茶の方が馴染みがあるのではないでしょうか。ところが、日本における煎茶文化の歴史は、茶の湯の歴史に比べてあまり知られていないように思います。あるいは、日常的な飲料でしかなく、それが文化的な背景を持っていることすらあまり知られていないように思います。

しかし、江戸時代には文人とよればれる文化人たちに愛され、煎茶会もしばしば開かれていました。幕末から明治にかけては、その勢いは茶の湯を凌ぐほどであったともいわれています。その後、煎茶道の流派も各地に作られ、それぞれの流派ごとに作法も確立されていきました。

また、近年では、江戸時代後期から幕末にかけて造られた煎茶室が、近代以降の数寄屋建築(和風建築)に大きな影響を与えたということが主張され、煎茶文化に対する研究も注目を集めつつあります。

いずれにしましても、日本における茶文化の全体像を把握するには、煎茶の文化史の理解は不可欠だと思います。

この講座では、まず、日本の喫茶文化全体の流れや江戸時代の文化を復習します。その上で、煎茶を喫する文化が、江戸時代前期にどのようにして中国から日本に伝えられたのかを学びます。

次に、日本において煎茶文化が広まっていく際に大きな役割を果たした高遊外売茶翁こうゆうがいばいさおうという人物を扱います。売茶翁は、その名前すら聞いたことがないという方も多いかと思いますが、例えば、『雨月物語』を著した上田秋成は、いま煎茶が流行しているのは売茶翁にはじまる、と述べています通り、日本の煎茶文化を理解するうえで欠かせない人物です。講座では、売茶翁の漢詩文を丁寧に読み、売茶翁の煎茶にこめた思いを理解するとともに、売茶翁が後世に与えた影響もあとづけていきます。文豪・夏目漱石なども売茶翁の歌を残していますので、確認してみましょう。

次に、江戸時代後期に活躍した文人たちを扱います。彼らの活動によって、日本の煎茶文化はひとつの隆盛期をむかえました。ここで取りあげる文人は、木村蒹葭堂きむらけんかどう、上田秋成、田能村竹田、頼山陽などです。彼ら/彼女らの著した煎茶書や漢詩、絵画作品などを読み解き、彼ら/彼女らがどのような雰囲気のなかで煎茶が喫していたのか、なぜ煎茶を喫することを好んだのかをみていきます。

最後に、幕末から明治初期にかけての煎茶文化をたどります。特に、山内容堂や松平春嶽などといった煎茶を好んだ大名たちの漢詩、また、全国各地で開かれた煎茶会の様子を記録した茗讌図録(絵入りの煎茶会記)を扱います。当時の煎茶会の様子や道具の取り合わせなどを参照し、その後の和風建築、あるいは和室にどのような影響を与えたのかを確認したいと思います。

この講座では、茶文化の堅実な知識を獲得するために、授業では歴史的文献も扱います。文献は古文や漢詩文ですが、都度、現代語訳を提示しますし、もちろん、その文献が書かれた歴史的背景などについてもお話ししますので、古文や漢詩文に馴染みのない方、茶文化についてこれから学んでいきたいという方も理解していただけるようにいたします。

「煎茶編」では、高遊外売茶翁の『売茶翁偈語』、上田秋成の『清風瑣言』、田能村竹田と頼山陽、山内容堂と松平春嶽などの漢詩、夏目漱石の『草枕』、『青湾茶会図録』などを扱う予定です。

※全体像をつかむために「茶の湯編」と「煎茶編」をあわせて受講いただくことをお勧めします。茶の湯編はこちら
※受講者はアーカイブ(録画)の視聴が可能です。一部の回に参加のご都合がつかない場合も、見逃しなく受講できます。
※アーカイブの視聴可能期間は、講座終了から1年間です。

◆受講の流れ

1. お申し込み

2. 開講&受講の決定

3. リアルタイムで授業に参加/アーカイブを見る/クラスルームから資料にアクセス

◦リアルタイムでの授業への参加URLは、受講決定時に自動送信されるメールに記載されている他、マイページ内「ダッシュボード」からもご確認いただけます。

◦資料はGoogle社が提供する学習管理アプリケーション「Googleクラスルーム」から配布いたします。クラスルームにつきましては、受講決定時に送られるメール(「Googleクラスルームにご参加ください」)をご確認下さい。

◦アーカイブはマイページ内「受講状況」からご覧いただけるほか、本ページ下部の「授業スケジュール」およびクラスルームからもご覧いただけます。

◦ディセミネでの初回受講時に送られる招待メールを承認することで、Googleカレンダーと自動で同期が可能です。是非ともお使いください。

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授業予定

第1回 4月10日(水)19:00〜20:30

煎茶文化の輸入と黄檗文化


第2回 4月24日(水)19:00〜20:30

高遊外売茶翁について


第3回 5月8日(水)19:00〜20:30

高遊外売茶翁とその影響


第4回 5月22日(水)19:00〜20:30

近世後期文人と煎茶の喫茶趣味


第5回 6月5日(水)19:00〜20:30

幕末から明治にかけての煎茶会


茶の湯編(3/15で終了)
第1回 茶の湯の成立まで
第2回 千利休の茶会
第3回 戦国時代の大名と茶の湯
第4回 江戸時代の大名と茶の湯
第5回 数寄者と茶の湯

茶の湯編はこちら
https://disseminer.jp/courses/16

※ 授業の進捗等により予定が変更になる場合がございます。予めご了承ください。

こんな人におすすめ

日本の喫茶文化について知りたい人。
喫茶に関する文献を読んでみたい人。

講師情報

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島村幸忠

美学、日本文化論——特に江戸時代後期の文人に関する研究

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授業スケジュール


日本の喫茶文化を知る——歴史的文献の読解を交えて(煎茶編)

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