ケアと共感の哲学:ネル・ノディングス『ケアリング』を中心に[ケア編]

木曜日20:00〜21:30

入門★★☆

講義の開催が決定しました

講義回数5 回

受講料9,800 円

現在の受講者数33(最低開講人数: 3)


内容紹介

近年、さまざまな場面、学問で「ケア」、「共感」という概念が用いられるようになりました。しかし、そもそも「ケア」とはどういう行為なのでしょうか。また、一体なぜ「共感」が重要なのでしょうか。この講座では「ケア倫理」の創始者の一人であるネル・ノディングスの『ケアリング——倫理と道徳の教育 女性の観点から』を中心に、「ケア」とはどういう行為なのかを哲学的な観点から考えていきたいと思います。

ノディングスの「ケア」概念は、一般的なルールが要求する客観性(誰にでも適用可能であること)をあえて破り、身近な人、とりわけ子どもに強くコミットするものです。私たちの感情や行為の実相に根ざしたこの「ケア」概念は、目の前の子ども、患者に関わる人たちにとって、きわめて大きな意味を持つでしょう。そのような「ケア」概念がどのような意義をもち、またいかなる問題を孕むのか、この講義を通じて考えていきたいと思います。

各回ごとに下記のテーマを設定し、毎回授業の前半でノディングスらの主張を振り返ったあと、後半では、前半の内容をふまえて、こちらが用意する問題について参加者の人たちと議論を進めていきます。皆さんの個人的経験などを踏まえた意見も大歓迎です。議論が苦手という方は聞いているだけでも構いません。

受講者にはGoogle Classroomを使って資料の配付や、質問やコメントの受付を行います。適宜利用してください。ただし、必ず回答できるとは限りませんので、その点はご了承ください。開講決定後に受講者をクラスルームへ招待します。

※受講者はアーカイブ(録画)の視聴が可能です。一部の回に参加のご都合がつかない場合も、見逃しなく受講できます。

※アーカイブの視聴可能期間は、講座終了から1年間です。


テキスト

ノディングズ、ネル(立山善康他訳)『ケアリング——倫理と道徳の教育 女性の観点から』晃洋書房、1997年

ノディングスの議論を紹介するときには、このテキストをおもに用います。ただし、入手が容易ではないので、無理に入手してもらわなくても大丈夫です。ノディングスの他のテキストとしては、Noddings, Nel (2010) The Maternal Factor: Two Paths to Morality, University of California Pressを用います。この著作の邦訳はありませんので、この本を引用、参照する場合は、こちらで適宜日本語に訳して紹介します。

各回内容

第1回 「べき」から「したい」への移行
他の人をケアすることは、容易に想像できるように、精神的、肉体的に大変なことです。しかしノディングスは、ケアリングの本質に「つらい義務」ではなく「望んでしたい」という欲求を見出します。その議論を確認していきます。

第2回 自然なケアリングと倫理的ケアリング
「望んでしたい」というケアリングの本質は、現実として多くの人間関係に現れないものです。そこでは、「望んでしたい」と「つらい義務」の緊張関係が生じます。この関係について、ノディングスが導入する「自然なケアリング」と「倫理的ケアリング」という概念をともに、ケア倫理の展開を考えていきます。

第3回 ケアは政策となりうるのか? —— ケアの「範囲」の拡大可能性
ケアする側の共感が重要な要素になる以上、ケアリングという行為は、ごく狭い領域に限定されるように見えます。それでは、ケア倫理はごく個人的な関係性しか扱えないのでしょうか?「ケアの網(web)」の概念をもとに、一対一の関係からケアリングが広がりゆく可能性について考えます。

第4回 ケア倫理の立場から見る「トロッコ問題」
倫理学のなかで非常に有名な問題である「トロッコ問題」について、ケア倫理、もしくはノディングスがどう考えるかを確認していきます。これまで紹介してきたケア倫理の特性の集大成にあたるものになります。

第5回 これまでのまとめ
ノディングスのケア倫理についてこれまで紹介してきたことを簡単に概括したあと、少 し具体的な問題に対して、ノディングスなら、あるいはみなさん一人ひとりなら、どのように考えるかについて、議論をしていきたいと思います。

◆受講の流れ

1. お申し込み

2. 開講&受講の決定

3. リアルタイムで授業に参加/アーカイブを見る/クラスルームから資料にアクセス

◦リアルタイム授業への参加URLは、受講決定時に自動送信されるメールに記載されている他、マイページ内「ダッシュボード」からもご確認いただけます。

◦資料はGoogle社が提供する学習管理アプリケーション「Googleクラスルーム」から配布いたします。クラスルームにつきましては、受講決定時に送られるメール(「Googleクラスルームにご参加ください」)をご確認下さい。

◦アーカイブはマイページ内「受講状況」からご覧いただけるほか、本ページ下部の「授業スケジュール」およびクラスルームからもご覧いただけます。

◦ディセミネでの初回受講時に送られる招待メールを承認することで、Googleカレンダーと自動で同期が可能です。是非ともお使いください。

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授業予定

第1回 4月11日(木)20:00〜21:30

「べき」から「したい」への移行


第2回 4月25日(木)20:00〜21:30

自然なケアリングと倫理的ケアリング


第3回 5月16日(木)20:00〜21:30

ケアは政策となりうるのか? —— ケアの「範囲」の拡大可能性


第4回 6月6日(木)20:00〜21:30

ケア倫理の立場から見る「トロッコ問題」


第5回 6月27日(木)20:00〜21:30

これまでのまとめ


共感編(3月14日で終了)
第1回 二つの共感 —— シンパシーとエンパシー
第2回 ケアの条件としての共感
第3回 ケアの「範囲」——海外への募金の例から考える
第4回 なぜケア論が生じたか —— 他の学説との立ち位置
第5回 思考の性差 ——キャロル・ギリガンの議論とともに

共感編のアーカイブはこちら
https://disseminer.jp/courses/7

※ 開講1週間前までは予定が変更される可能性があります。現時点での予定はページ下部にある各授業の内容を参照ください。

こんな人におすすめ

ケアについて哲学的に考えてみたい人
現在さまざまなかたちでケアに関わっている人、あるいは今後関わる可能性のある人
子供の教育や、医療・介護などに関わりがある人、あるいは関心がある人

講師情報

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豊川祥隆

京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了
専門は18世紀イギリス哲学・ケア倫理

講師情報の詳細を見る ▶


授業スケジュール

  • 2024年04月11日 20:00 〜 21:30

    第1回 「べき」から「したい」への移行

    参加可能人数: 無制限
     
  • 2024年04月25日 20:00 〜 21:30

    第2回 自然なケアリングと倫理的ケアリング

    参加可能人数: 無制限
     
  • 次回開催

    2024年05月16日 20:00 〜 21:30

    第3回 ケアは政策となりうるのか? —— ケアの「範囲」の拡大可能性

    参加可能人数: 無制限
     
  • 2024年06月06日 20:00 〜 21:30

    第4回 ケア倫理の立場から見る「トロッコ問題」

     
  • 2024年06月27日 20:00 〜 21:30

    第5回 これまでのまとめ

     

ケアと共感の哲学:ネル・ノディングス『ケアリング』を中心に[ケア編]

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