自由はいかにして生まれるのか——ハンナ・アーレント『革命論』を読む
開講期間: 2025年12月6日 〜 2026年3月7日
隔週土曜日20:00〜21:30
難易度: 中級※ 難易度についてはこちらを参照ください。
内容紹介
ナチ・ドイツとスターリン体制のソ連を対象に、全体主義の発生とその内的な構造を分析した『全体主義の起源』(1951)、全体主義によって押し潰されてしまった人間の「活動的な生」をあらためて分析した『人間の条件』(1958)という二大主著の後に書かれたのがこの『革命論』です。
『全体主義の起源』『人間の条件』にくらべると必ずしも知名度は高くありませんが、前二著の成果を踏まえつつ、フランス革命とアメリカ革命を比較しながら論じることで現代社会の起源と課題を問う本書は、思想史家、政治思想家としてのアーレントの卓越した力量をいかんなく示しており、彼女の最高傑作と呼んでも過言ではありません。特に、今でも革命の代名詞と言えるフランス革命ではなく、アメリカ革命を積極的に評価しようとするまなざしは、刊行から60年が経過した今日でもその鋭利さを失っていません。
序論と6つの章からなる本書を、本講座では毎回1章ずつ検討しながら読んでいきます。アーレントによれば、革命とは圧政からの解放とは区別される「自由の創設」を目指す出来事です。しかしこの課題は、フランス革命においては、社会の貧困と悲惨さによってすぐに忘れられ、革命運動は恐怖政治へと変貌していきました。一方アメリカでは、貧困は大きな問題にならず、革命は憲法の制定によって一定の成功をおさめたと見なされます。ではここで問われていた「自由」とはどのようなものだったのでしょうか。
ここには『全体主義の起源』『人間の条件』から連続するアーレントの思想的なモチーフが現われています。すなわち「人間はいかにして真に自由な行為をなすことができるのか」、あるいは「人間の自由を可能にする場はいかにして生まれるのか」という問いです。アーレントにとって自由とは、個人の内面的自由ではなく、人と人のあいだで言葉を交わし、新しい始まりを生みだす行為そのものを意味します。そして革命が目指したのは、こうした自由が持続的に現われうる公的空間――政治的自由の場――を創設することでした。
現代の自由と民主主義は、まさにフランスとアメリカの革命を基盤として生まれてきたものです。したがって、革命に賭けられた「自由」についての問いは、とりもなおさず私たちの現代社会の成り立ちそのものを問いなおすものです。民主主義の危機やポピュリズムの台頭がさかんに論じられ、さまざまな分断や対立が先鋭化している今日、「自由」という私たちの価値観の根底を再検討することは、喫緊の思想的課題だと言えるでしょう。
かつてジャン゠ジャック・ルソーは、イギリス人が自由なのは選挙の時だけであり、選挙が終わってしまえばふたたび奴隷に戻るのだと述べました。こうした事態は現代の政党政治にも当てはまらないでしょうか。アーレントは『革命論』の後半で、政党政治に代わる可能性として、革命にともなってかならず生じてくる「評議会制」に言及しています。果たしてそれは、当時批判されたように、世界のことを分かっていない人民の「素朴な夢」だったのでしょうか。アーレントが「評議会」に言及するとき、そこに賭けられていた可能性とはどのようなものだったのでしょうか。本講座ではアーレントが論じた「自由」の概念を中心に、彼女の思想の射程と今日的な意義について考えてみたいと思います。
★テキスト★
ハンナ・アーレント『革命論』森一郎訳、みすず書房、2022年ハンナ・アレント『革命について』志水速雄訳、ちくま学芸文庫、1995年
『革命論』はドイツ語版から、『革命について』は英語版からの翻訳です。本講座では基本的に『革命論』に依拠しますが、『革命について』をお使いいただいても構いません(ただし原文も訳文もかなり異なります)。またテキストは必ずしもご準備いただく必要はありませんが、より深く学ぶためにはご自身でもお読みいただくことを推奨します。
※受講者はアーカイブ(録画)の視聴が可能です。リアルタイムで授業に参加できない場合も見逃しなく受講できます。
※途中参加の場合も、全授業のアーカイブ動画をご覧いただけます。
※アーカイブ動画は、最低1年間視聴可能です。
◆受講の流れ◆
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2. 開講&受講の決定
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授業予定
イントロダクション——アーレントの政治思想と『革命論』の位置づけ
第2回 2025年12月20日(土)20:00〜21:30
革命とは何か、あるいは革命と自由
第3回 2026年1月10日(土)20:00〜21:30
革命と貧困——フランスとアメリカの違い
第4回 2026年1月24日(土)20:00〜21:30
アメリカ革命と公的自由
第5回 2026年2月7日(土)20:00〜21:30
憲法と権力の構成——「自由の創設」
第6回 2026年2月21日(土)20:00〜21:30
新しい始まり——革命と人間の誕生性
第7回 2026年3月7日(土)20:00〜21:30
アメリカ革命の限界と評議会制の可能性
※ 授業の進捗等により予定が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
こんな人におすすめ
アーレントの思想を体系的に学んでみたい人
『革命論』をしっかりと読んで理解したい人
政治・歴史・思想の関連や影響に関心のある人
「自由」や「民主主義」について政治哲学的に考えなおしてみたい人
講師情報

授業スケジュール
2025年12月6日 20:00 〜 21:30
第1回 イントロダクション——アーレントの政治思想と『革命論』の位置づけ
参加可能人数: 無制限次回開催
2025年12月20日 20:00 〜 21:30
第2回 革命とは何か、あるいは革命と自由
参加可能人数: 無制限2026年1月10日 20:00 〜 21:30
第3回 革命と貧困——フランスとアメリカの違い
2026年1月24日 20:00 〜 21:30
第4回 アメリカ革命と公的自由
2026年2月7日 20:00 〜 21:30
第5回 憲法と権力の構成——「自由の創設」
2026年2月21日 20:00 〜 21:30
第6回 新しい始まり——革命と人間の誕生性
2026年3月7日 20:00 〜 21:30
第7回 アメリカ革命の限界と評議会制の可能性
自由はいかにして生まれるのか——ハンナ・アーレント『革命論』を読む
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