脱構築とは何か——ジャック・デリダ『グラマトロジーについて』を読む

開講期間: 2025年8月2日 2025年10月25日

隔週土曜日または日曜日19:00〜20:30

難易度: 中級※ 難易度についてはこちらを参照ください。

受講者募集中

募集期間2025年7月26日 20:30 まで

授業回数7 回

受講料13,720 円

現在の申込数3(最低開講人数: 3)


内容紹介

この講座では20世紀フランスの哲学者ジャック・デリダ(1930–2004)の「脱構築」の思想を、彼の初期代表作『グラマトロジーについて』(1967)を読み解きながら考えていきます。

デリダは、かつて「フランス現代思想」や「ポスト構造主義」と呼ばれた潮流の代表者であり、彼の代名詞ともなった「脱構築」という用語は、もともとの西洋形而上学批判という文脈を離れ、文芸批評から建築、ファッションなどさまざまな領域で使われる言葉となりました。どこかで目にしたことがあるという方も多いでしょう。

では、デリダの語った「脱構築」とはどのようなものだったのでしょうか。それは端的にいえば、西洋の思想史において暗黙のうちに前提とされてきた思考を暴き、その構造をずらし、組みかえる読解の試みだったと言えるでしょう。デリダによれば、古代ギリシャのプラトンからフッサールやハイデガーにいたるまで、西洋哲学は「現前性」という価値を基準として構築されてきました。つまり意味であれ真理であれ、われわれに対して直接現前するものを本来的と見なし、それを代理し、表象するものを派生的で二次的なものとみなすという点で、西洋哲学はつねに一致した見解を取ってきたのです。

したがって彼の「脱構築」とは、まず、この「現前の形而上学」にひそむ暗黙の前提を暴き、その根拠を問い返すことによって、西洋思想の無根拠性と暴力性を曝けだす批判的な読解です。それは自分たちのよって立つ思考の地盤を問いなおす反省的な営為だともいえるでしょう。しかし、それと同時に脱構築は、むしろこの「無根拠性」を出発点とすることで新たな思考を生み出すことを目指す、極めて野心的なプログラムでもありました。根拠にひそむ暴力性を認識しつつ、従来とは異なる別の読解、別の思考、別の倫理を構築すること、これこそが、脱構築が目指した肯定的な目標です。

本講座で取りあげる『グラマトロジーについて』では、プラトン、アリストテレス以来、口頭による話し言葉(パロール)を意味や思考の源泉とみなし、文字ないし書き言葉(エクリチュール)を、その派生物ないし代理物とみなす音声中心主義が議論の中心にすえられます。特にソシュール、レヴィ゠ストロース、ルソーのテクストを綿密に読解することから、彼らに共通して受け継がれてきた音声中心主義的な思考を暴きつつ、その思考が、実は、彼らによって音声的思考の代理物と見なされ、二次的なものとして批判されてきたエクリチュールの作用によって構築されていることを明るみに出します。

デリダが「ポスト構造主義」と呼ばれたことについて冒頭で言及しましたが、この呼び名は、本書においてレヴィ゠ストロースやソシュールの「構造主義」をその前提から批判したことからついたものです。「原エクリチュール」「差延」「代補」「痕跡」「超越論的シニフィアン」等々といった独自の用語で論じられるデリダの思考は、一見きわめて難解ですが、丁寧に読み解いていけば、彼の問いのもつ射程と革新性が確かな輪郭をもって立ち現れてくるはずです。

本講座では、特に同時期に書かれた『声と現象』やその他の論文も適宜参照しながら、初期のデリダがみずからの立場を探っていった様子を明らかにしたいと思います。そしてデリダ以後、われわれはどのように思考を展開することが可能なのか。皆さんといっしょに考えてみたいと思います。

★テキスト★

ジャック・デリダ『根源の彼方に——グラマトロジーについて』(上下巻)、足立和浩訳、現代思潮社、1984年

テキストは必ずしもご準備いただく必要はありません。
また授業内で引用する際は、必要に応じて講師が訳しなおします。

思想史の読み替えによってつむがれていくデリダの思想は、その文体ともあいまってかなり難易度の高いものです。哲学的な議論に慣れていない初心者の方の受講は推奨できませんのでご注意ください。

※受講者はアーカイブ(録画)の視聴が可能です。リアルタイムで授業に参加できない場合も見逃しなく受講できます。
※途中参加の場合も、全授業のアーカイブ動画をご覧いただけます。
※アーカイブ動画は、講座の受付終了から1年間視聴可能です。


◆受講の流れ◆

1. お申し込み

2. 開講&受講の決定

3. リアルタイムで授業に参加/アーカイブを見る/クラスルームから資料にアクセス

◦リアルタイム授業への参加URLは、受講決定時に自動送信されるメールに記載されている他、マイページ内「ダッシュボード」からもご確認いただけます。

◦講師とのやりとりや資料の配付はGoogle社が提供する学習管理アプリケーション「Googleクラスルーム」から行います。クラスルームにつきましては、受講決定時に別途招待メールが届きますので、そちらからご参加ください。

◦アーカイブはマイページ内「受講状況」からご覧いただけるほか、本ページ下部の「授業スケジュール」およびクラスルームからもご覧いただけます。

◦ディセミネでの初回受講時に送られる招待メールを承認することで、Googleカレンダーと自動で同期が可能です。是非ともお使いください。

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授業予定

第1回 2025年8月2日(土)19:00~20:30


イントロダクション——ジャック・デリダと脱構築の思想


第2回 2025年8月17日(日)19:00~20:30


ソシュールと記号の概念


第3回 2025年8月30日(土)19:00~20:30


フッサールと現前の形而上学——『声と現象』から


第4回 2025年9月13日(土)19:00~20:30


レヴィ゠ストロースとエクリチュールの暴力


第5回 2025年9月27日(土)19:00~20:30


ルソー①——代補としてのエクリチュール


第6回 2025年10月11日(土)19:00~20:30


ルソー②——根源の代補


第7回 2025年10月25日(土)19:00~20:30


総括と展望——脱構築の倫理

※ 授業の進捗等により予定が変更になる場合がございます。予めご了承ください。

こんな人におすすめ

デリダの思想に興味がある人
現代思想に興味がある人
フランス哲学に興味のある人
デリダの本を読んで挫折した経験のある人

講師情報

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渡辺洋平

1985年宮城県生まれ。京都大学総合人間学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科修了。
専門は思想史・芸術史。

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授業スケジュール

  • 次回開催

    2025年8月2日 19:00 〜 20:30

    第1回 イントロダクション——ジャック・デリダと脱構築の思想

    参加可能人数: 無制限
     
  • 2025年8月17日 19:00 〜 20:30

    第2回 ソシュールと記号の概念

     
  • 2025年8月30日 19:00 〜 20:00

    第3回 フッサールと現前の形而上学——『声と現象』から

     
  • 2025年9月13日 19:00 〜 20:30

    第4回 レヴィ゠ストロースとエクリチュールの暴力

     
  • 2025年9月27日 19:00 〜 20:30

    第5回 ルソー①——代補としてのエクリチュール

     
  • 2025年10月11日 19:00 〜 20:30

    第6回 ルソー②——根源の代補

     
  • 2025年10月25日 19:00 〜 20:30

    第7回 総括と展望——脱構築の倫理

     

脱構築とは何か——ジャック・デリダ『グラマトロジーについて』を読む

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