絵巻物から読み解く「八幡神」の思想史——移り行く信仰のかたちを捉える
開講期間: 2024年09月13日 〜 2024年11月22日
9/13、9/27、10/11、10/25、11/15(すべて金曜日)の19:00〜20:30
入門★☆☆
内容紹介
みなさんにとって一番身近な神様はどの神様でしょうか。お稲荷さんでしょうか、それとも天神さまでしょうか。日本には八百万神と呼ばれるほど数多くの神様が存在しますが、神社本庁の「全国神社祭祀祭礼総合調査」によると、日本で最も多くの神社に祭られているのは、実は八幡神です。
同調査によると、八幡信仰と関係のある神社の数は7800社以上に及び、続く伊勢信仰の約4400社と比較すると、いかに規模の大きな信仰であるかがわかります。お住まいの地域に、「●●八幡宮」「〇〇八幡神社」など、「八幡神」の名を冠されたお社があるという方も多いのではないかとおもいます。
しかし、日本で最も多く祭られているにもかかわらず、八幡神がいったいどのような神様なのか深くご存じの方は少ないのではないでしょうか。実は、八幡神は、海の向こうに出自を持ち、時に「護国・武運の神」であり、時に「衆生済度の神」の顔も持つ神様なのです。では、いったいどのような経緯で、このような多面性を持つに至ったのでしょうか。この疑問にアプローチするには、八幡神がどのように信仰されてきたかを、時代背景にも目を配りつつ、歴史的資料から紐解く必要があります。この講座では八幡縁起(後述)に着目することで、八幡神がどのように人々に受け入れられ、信仰されてきたのかを考えてみたいと思います。
八幡神は渡来系の神で、古代の記紀神話には登場していません。にもかかわらず、聖武天皇の治世時(神亀元年〈724〉-天平勝宝元年〈749〉)に、国家によって祭られる神へと変身していきます。天平勝宝元年(749)末には、東大寺盧舎那仏の建立の際に平城京(奈良)にて朝廷から迎えられたという記録があり、その後たちまちに各地に勧請され、全国へ広まりました。
続く9世紀には、平安京(京都)の守護神として男山に移され、石清水八幡宮が創られます。伊勢神宮に次ぐ「第二の宗廟」として、朝廷とそれに仕える公家・武家に厚く尊崇されました。また、八幡神は、神仏習合が進む中で早い時期に「八幡大菩薩」と呼ばれるようになり、大菩薩として衆生を救済するという方向で、民衆に広く信仰されました。
しかし、衆生を救済する八幡大菩薩は、同時に護国神として敵を殺生するという矛盾的な要素も併せ持っていました。
最もよく知られている八幡神の姿は、源氏を守護し、武士の戦勝を祈る武神としての姿ではないでしょうか。それは、蒙古襲来以降、「敵国降伏」という八幡神の霊験説が伝播したことに関係があります。
蒙古軍との合戦を描いた鎌倉末期の石清水縁起『八幡愚童訓』は、蒙古の船が「八幡大菩薩ノ御影向」によって退散させられたと語っています。また、同じ資料には、「異国降伏ノミナラズ、朝敵追討モ相同ジ」、八幡神の母とされる神功皇后の「御腹ニシテ異賊ヲ滅シ」とあり、八幡神が幼い時から朝廷に向かう凶賊を服従させることのできた神であったことがわかります。
以上のように、八幡神は、「衆生救済」を行う大菩薩である一方で、「敵を殺す」という、一見すると矛盾する性格を持ち合わせているのです。
その他にも、安産の女神である神功皇后とともに祭られていることや、渡来系の神であったにもかかわらず、天皇の祖先神として応神天皇と同一視されるようになったことなど、八幡信仰の歴史には多くの謎が残されています。
この講座では、思想史の観点からの先端的な研究成果を踏まえつつ、縁起から八幡信仰の多面性を探ります。縁起とは、社寺の起源や由来を記した絵巻物を指し、社寺の歴史的な記録のみならず、神話や伝説などの伝承も含み込んだものです。縁起に注目することで、そこに描かれたことの「事実」ではなく、神が「いかに描かれたか」を読み解くことが可能となります。縁起とは、いわば、その成立当時の社会的・文化的な文脈に規定された、神をめぐる想像力のありようを示す歴史的資料とも言えるのです。
本講座で主に扱う八幡縁起は、八幡信仰を背景とする縁起絵巻であり、詞書に加え多彩な絵から構成されています。そのため、初学者の方にも親しみやすいものです。思想史の視点をベースに、史実に照らしつつ、先述の矛盾の解答を含めて、八幡信仰の歴史に残っている多くの謎を八幡縁起を読みながら解いてみましょう。その過程で、信仰のかたちが時代とどう関わるかを捉える眼を養います。
※受講者はアーカイブ(録画)の視聴が可能です。一部の回に参加のご都合がつかない場合も、見逃しなく受講できます。
※途中参加の場合も、全授業のアーカイブ動画をご覧いただけます。
※アーカイブの視聴可能期間は、講座終了から1年間です。
↓
2. 開講&受講の決定
↓
3. リアルタイムで授業に参加/アーカイブを見る/クラスルームから資料にアクセス
同調査によると、八幡信仰と関係のある神社の数は7800社以上に及び、続く伊勢信仰の約4400社と比較すると、いかに規模の大きな信仰であるかがわかります。お住まいの地域に、「●●八幡宮」「〇〇八幡神社」など、「八幡神」の名を冠されたお社があるという方も多いのではないかとおもいます。
しかし、日本で最も多く祭られているにもかかわらず、八幡神がいったいどのような神様なのか深くご存じの方は少ないのではないでしょうか。実は、八幡神は、海の向こうに出自を持ち、時に「護国・武運の神」であり、時に「衆生済度の神」の顔も持つ神様なのです。では、いったいどのような経緯で、このような多面性を持つに至ったのでしょうか。この疑問にアプローチするには、八幡神がどのように信仰されてきたかを、時代背景にも目を配りつつ、歴史的資料から紐解く必要があります。この講座では八幡縁起(後述)に着目することで、八幡神がどのように人々に受け入れられ、信仰されてきたのかを考えてみたいと思います。
八幡神は渡来系の神で、古代の記紀神話には登場していません。にもかかわらず、聖武天皇の治世時(神亀元年〈724〉-天平勝宝元年〈749〉)に、国家によって祭られる神へと変身していきます。天平勝宝元年(749)末には、東大寺盧舎那仏の建立の際に平城京(奈良)にて朝廷から迎えられたという記録があり、その後たちまちに各地に勧請され、全国へ広まりました。
続く9世紀には、平安京(京都)の守護神として男山に移され、石清水八幡宮が創られます。伊勢神宮に次ぐ「第二の宗廟」として、朝廷とそれに仕える公家・武家に厚く尊崇されました。また、八幡神は、神仏習合が進む中で早い時期に「八幡大菩薩」と呼ばれるようになり、大菩薩として衆生を救済するという方向で、民衆に広く信仰されました。
しかし、衆生を救済する八幡大菩薩は、同時に護国神として敵を殺生するという矛盾的な要素も併せ持っていました。
最もよく知られている八幡神の姿は、源氏を守護し、武士の戦勝を祈る武神としての姿ではないでしょうか。それは、蒙古襲来以降、「敵国降伏」という八幡神の霊験説が伝播したことに関係があります。
蒙古軍との合戦を描いた鎌倉末期の石清水縁起『八幡愚童訓』は、蒙古の船が「八幡大菩薩ノ御影向」によって退散させられたと語っています。また、同じ資料には、「異国降伏ノミナラズ、朝敵追討モ相同ジ」、八幡神の母とされる神功皇后の「御腹ニシテ異賊ヲ滅シ」とあり、八幡神が幼い時から朝廷に向かう凶賊を服従させることのできた神であったことがわかります。
以上のように、八幡神は、「衆生救済」を行う大菩薩である一方で、「敵を殺す」という、一見すると矛盾する性格を持ち合わせているのです。
その他にも、安産の女神である神功皇后とともに祭られていることや、渡来系の神であったにもかかわらず、天皇の祖先神として応神天皇と同一視されるようになったことなど、八幡信仰の歴史には多くの謎が残されています。
この講座では、思想史の観点からの先端的な研究成果を踏まえつつ、縁起から八幡信仰の多面性を探ります。縁起とは、社寺の起源や由来を記した絵巻物を指し、社寺の歴史的な記録のみならず、神話や伝説などの伝承も含み込んだものです。縁起に注目することで、そこに描かれたことの「事実」ではなく、神が「いかに描かれたか」を読み解くことが可能となります。縁起とは、いわば、その成立当時の社会的・文化的な文脈に規定された、神をめぐる想像力のありようを示す歴史的資料とも言えるのです。
本講座で主に扱う八幡縁起は、八幡信仰を背景とする縁起絵巻であり、詞書に加え多彩な絵から構成されています。そのため、初学者の方にも親しみやすいものです。思想史の視点をベースに、史実に照らしつつ、先述の矛盾の解答を含めて、八幡信仰の歴史に残っている多くの謎を八幡縁起を読みながら解いてみましょう。その過程で、信仰のかたちが時代とどう関わるかを捉える眼を養います。
※受講者はアーカイブ(録画)の視聴が可能です。一部の回に参加のご都合がつかない場合も、見逃しなく受講できます。
※途中参加の場合も、全授業のアーカイブ動画をご覧いただけます。
※アーカイブの視聴可能期間は、講座終了から1年間です。
◆受講の流れ◆
1. お申し込み↓
2. 開講&受講の決定
↓
3. リアルタイムで授業に参加/アーカイブを見る/クラスルームから資料にアクセス
◦リアルタイム授業への参加URLは、受講決定時に自動送信されるメールに記載されている他、マイページ内「ダッシュボード」からもご確認いただけます。
◦講師とのやりとりや資料の配付はGoogle社が提供する学習管理アプリケーション「Googleクラスルーム」から行います。クラスルームにつきましては、受講決定時に別途招待メールが届きますので、そちらからご参加ください。
◦アーカイブはマイページ内「受講状況」からご覧いただけるほか、本ページ下部の「授業スケジュール」およびクラスルームからもご覧いただけます。
◦ディセミネでの初回受講時に送られる招待メールを承認することで、Googleカレンダーと自動で同期が可能です。是非ともお使いください。
授業予定
第1回 9月13日(金)19:00〜20:30
第2回 9月27日(金)19:00〜20:30
第3回 10月11日(金)19:00〜20:30
第4回 10月25日(金)19:00〜20:30
第5回11月15日(金)11月22日(金)19:00〜20:30
※第5回の授業日が変更となりましたのでご注意ください。
八幡とは何か?八幡縁起が語る八幡神の姿と由来
第2回 9月27日(金)19:00〜20:30
石清水八幡宮の成立―天下の宗廟
第3回 10月11日(金)19:00〜20:30
国家を鎮護する八幡大菩薩
第4回 10月25日(金)19:00〜20:30
衆生を救済する八幡大菩薩
第5回
祇園祭と八幡神
※第5回の授業日が変更となりましたのでご注意ください。
※ 授業の進捗等により予定が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
こんな人におすすめ
日本の宗教・思想に興味がある人
中世の歴史に興味がある人
遠い過去の歴史的資料に触れてみたい人
中世の歴史に興味がある人
遠い過去の歴史的資料に触れてみたい人
講師情報
授業スケジュール
2024年09月13日 19:00 〜 20:30
第1回 八幡とは何か?八幡縁起が語る八幡神の姿と由来
参加可能人数: 無制限2024年09月27日 19:00 〜 20:30
第2回 石清水八幡宮の成立——天下の宗廟
参加可能人数: 無制限次回開催
2024年10月11日 19:00 〜 20:30
第3回 国家を鎮護する八幡大菩薩
参加可能人数: 無制限2024年10月25日 19:00 〜 20:30
第4回 衆生を救済する八幡大菩薩
2024年11月22日 19:00 〜 20:30
第5回 祇園祭と八幡神
絵巻物から読み解く「八幡神」の思想史——移り行く信仰のかたちを捉える
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