芸術と思想はいかに結びつくか――デ・キリコにおける形而上絵画・技術への回帰・神の死を軸に
開講期間: 2026年5月25日 〜 2026年8月17日
隔週月曜日19:00に動画配信
難易度: 中級※ 難易度についてはこちらを参照ください。
※ この講座は録画配信での開講となります。質問の受付や資料配布は通常通りクラスルームにておこないます(詳細は下記ご参照ください)。
内容紹介
芸術や美術というものは、ときとして哲学あるいは思想と深く結びついています。本講座では、ジョルジョ・デ・キリコ(Giorgio de Chirico, 1888-1978)を例として、この問題を考えてみたいと思います。
デ・キリコは人気のない広場に立つ彫像や、遠近法が誇張された街路、マネキンと化した詩人や予言者、雑多なもので満たされた不思議な室内など、非常に奇妙な作品群を描いた画家です。こうした作品群は「形而上絵画 pittura metafisica」と呼ばれました。
デ・キリコは20世紀美術史において、シュルレアリスムの先駆者として重要な位置を与えられており、また著名な作品も多くあるので、画家の名前を知らなくても作品を見たことがあるという方も多いのではないかと思います。2024年に日本で大規模な回顧展があったことも記憶に新しいところです。
デ・キリコが形而上絵画を描いた時代は、ほぼ1910年代に重なります。1910年代といえば、キュビスムや表現主義などの潮流から抽象絵画が生じた時期ですが、抽象絵画勃興の時代にあって、デ・キリコは形而上絵画という独特の具象絵画を描き続けた画家でした。そしてこの形而上絵画の背景には、「意志」の哲学者アルトゥール・ショーペンハウアー(Arthur Schopenhauer, 1788-1860)と「神の死」の哲学者フリードリヒ・ニーチェ(Friedrich Nietzsche, 1844-1900)の思想があったのです。
また1920年代以降、デ・キリコの形而上絵画は第一大戦後の様々な美術潮流に影響を与えていきます。その代表格がシュルレアリスムです。一方、デ・キリコ自身は1919年に「技術への回帰」を唱えて、西洋美術史のいわゆる古典に立ち戻ろうという動きをみせます。この「技術への回帰」は、形而上絵画を絶賛したシュルレアリスムの詩人たちには「変節」ととらえられるようになり、デ・キリコとシュルレアリスムはケンカ別れをしてしまいます。
しかし、デ・キリコが1929年に発表した小説『エブドメロス』は、形而上絵画的なイメージに満ちたものであり、シュルレアリスムはこれを絶賛せずにはいられませんでした。
このようにデ・キリコをめぐる問題は多岐にわたりますが、本講座ではジョルジョ・デ・キリコをめぐる問題系を、形而上絵画理論を軸にお話します。
形而上絵画を理解するためには、その理論的根拠であるショーペンハウアーとニーチェの哲学、特にニーチェの「神の死」の思想が重要になります。ここでいう「神の死」とは、単にキリスト教が近代において力を失ったということを指すのではありません。それは世界の背後に仮構されてきた「神」という超越的なものを「なし」にして、新たに世界を捉えようというニーチェの試みでした。
ではいかにしてデ・キリコは、こうした「神の死」の世界観を絵画に落とし込んだのか?またそこから「技術への回帰」やシュルレアリスムとの確執といった問題がどのように生じていったのか?これらを検討することを通して、芸術と哲学、思想がいかに結びついていくかという問題を考えてもらいたいと思います。
現代のアートは極度にコンセプチュアルなものになっています。アートを理解するには、作品そのものを鑑賞するのは当然のことながら、その作品がどのような美術史的文脈や哲学、思想と関連しているのかを知る必要があります。したがって本講座は、デ・キリコを題材とした現代アート鑑賞のためのレッスンともなるでしょう。
デ・キリコの形而上絵画を、ニーチェらの思想を軸に読み解いていくことで、芸術と哲学、思想がいかに関係をもっているかを理解してもらうことが本講座の目的です。それによって、美術作品というものが、様々な思想的文脈にも左右されているという観点を得ることができるでしょう。そうした観点は美術作品の鑑賞に、新しい奥行を与えてくれることになります。
授業の流れとしては、まずデ・キリコの生涯と作品について、おおまかな知識を持ってもらった上で(第1回)、形而上絵画の理論的側面を、ニーチェとショーペンハウアーの思想から理解してもらいます(第2回)。さらに、ニーチェの永遠回帰の思想を軸にデ・キリコの作品を具体的に解釈していきます(第3回)。
そしてデ・キリコにおける大きな問題が「技術への回帰」ですが、これについてはショーペンハウアー、ニーチェの思想の系譜上にフロイトを位置づけることによって、精神分析的なアプローチから読み解きます(第4回)。
また以上の内容から、デ・キリコとシュルレアリスムの連続と断絶を読み解いた上で(第5回)、デ・キリコの小説『エブドメロス』を取り上げたいと思います(第6回)。そして最後に、20世紀美術史において「神の死」という観点が、いかなる射程をもつのかをお話したいと思います(第7回)。
———『もっと知りたいデ・キリコ:生涯と作品』東京美術、2024年
———『ジョルジョ・デ・キリコ:形而上絵画の行方』水声社、2026年5月刊行予定
※この講座は録画配信での開講となります。リアルタイムの授業はありませんが、質問等については各動画公開から2週間クラスルームにて受付・回答いたします。
※途中参加の場合も、全授業の動画をご覧いただけます。
※アーカイブ動画は、最低1年間視聴可能です。
https://disseminer.jp/courses/61
↓
2. 開講&受講の決定
↓
3. クラスルームから授業動画と資料にアクセス&質問をする
デ・キリコは人気のない広場に立つ彫像や、遠近法が誇張された街路、マネキンと化した詩人や予言者、雑多なもので満たされた不思議な室内など、非常に奇妙な作品群を描いた画家です。こうした作品群は「形而上絵画 pittura metafisica」と呼ばれました。
デ・キリコは20世紀美術史において、シュルレアリスムの先駆者として重要な位置を与えられており、また著名な作品も多くあるので、画家の名前を知らなくても作品を見たことがあるという方も多いのではないかと思います。2024年に日本で大規模な回顧展があったことも記憶に新しいところです。
デ・キリコが形而上絵画を描いた時代は、ほぼ1910年代に重なります。1910年代といえば、キュビスムや表現主義などの潮流から抽象絵画が生じた時期ですが、抽象絵画勃興の時代にあって、デ・キリコは形而上絵画という独特の具象絵画を描き続けた画家でした。そしてこの形而上絵画の背景には、「意志」の哲学者アルトゥール・ショーペンハウアー(Arthur Schopenhauer, 1788-1860)と「神の死」の哲学者フリードリヒ・ニーチェ(Friedrich Nietzsche, 1844-1900)の思想があったのです。
また1920年代以降、デ・キリコの形而上絵画は第一大戦後の様々な美術潮流に影響を与えていきます。その代表格がシュルレアリスムです。一方、デ・キリコ自身は1919年に「技術への回帰」を唱えて、西洋美術史のいわゆる古典に立ち戻ろうという動きをみせます。この「技術への回帰」は、形而上絵画を絶賛したシュルレアリスムの詩人たちには「変節」ととらえられるようになり、デ・キリコとシュルレアリスムはケンカ別れをしてしまいます。
しかし、デ・キリコが1929年に発表した小説『エブドメロス』は、形而上絵画的なイメージに満ちたものであり、シュルレアリスムはこれを絶賛せずにはいられませんでした。
このようにデ・キリコをめぐる問題は多岐にわたりますが、本講座ではジョルジョ・デ・キリコをめぐる問題系を、形而上絵画理論を軸にお話します。
形而上絵画を理解するためには、その理論的根拠であるショーペンハウアーとニーチェの哲学、特にニーチェの「神の死」の思想が重要になります。ここでいう「神の死」とは、単にキリスト教が近代において力を失ったということを指すのではありません。それは世界の背後に仮構されてきた「神」という超越的なものを「なし」にして、新たに世界を捉えようというニーチェの試みでした。
ではいかにしてデ・キリコは、こうした「神の死」の世界観を絵画に落とし込んだのか?またそこから「技術への回帰」やシュルレアリスムとの確執といった問題がどのように生じていったのか?これらを検討することを通して、芸術と哲学、思想がいかに結びついていくかという問題を考えてもらいたいと思います。
現代のアートは極度にコンセプチュアルなものになっています。アートを理解するには、作品そのものを鑑賞するのは当然のことながら、その作品がどのような美術史的文脈や哲学、思想と関連しているのかを知る必要があります。したがって本講座は、デ・キリコを題材とした現代アート鑑賞のためのレッスンともなるでしょう。
デ・キリコの形而上絵画を、ニーチェらの思想を軸に読み解いていくことで、芸術と哲学、思想がいかに関係をもっているかを理解してもらうことが本講座の目的です。それによって、美術作品というものが、様々な思想的文脈にも左右されているという観点を得ることができるでしょう。そうした観点は美術作品の鑑賞に、新しい奥行を与えてくれることになります。
授業の流れとしては、まずデ・キリコの生涯と作品について、おおまかな知識を持ってもらった上で(第1回)、形而上絵画の理論的側面を、ニーチェとショーペンハウアーの思想から理解してもらいます(第2回)。さらに、ニーチェの永遠回帰の思想を軸にデ・キリコの作品を具体的に解釈していきます(第3回)。
そしてデ・キリコにおける大きな問題が「技術への回帰」ですが、これについてはショーペンハウアー、ニーチェの思想の系譜上にフロイトを位置づけることによって、精神分析的なアプローチから読み解きます(第4回)。
また以上の内容から、デ・キリコとシュルレアリスムの連続と断絶を読み解いた上で(第5回)、デ・キリコの小説『エブドメロス』を取り上げたいと思います(第6回)。そして最後に、20世紀美術史において「神の死」という観点が、いかなる射程をもつのかをお話したいと思います(第7回)。
参考書
長尾天『ジョルジョ・デ・キリコ:神の死、形而上絵画、シュルレアリスム』水声社、2021年———『もっと知りたいデ・キリコ:生涯と作品』東京美術、2024年
———『ジョルジョ・デ・キリコ:形而上絵画の行方』水声社、2026年5月刊行予定
※この講座は録画配信での開講となります。リアルタイムの授業はありませんが、質問等については各動画公開から2週間クラスルームにて受付・回答いたします。
※途中参加の場合も、全授業の動画をご覧いただけます。
※アーカイブ動画は、最低1年間視聴可能です。
★関連講座★
シュルレアリスム美術を考える ——「神の死」以後の美術/「真実」以後の美術としてhttps://disseminer.jp/courses/61
◆受講の流れ◆
1. お申し込み↓
2. 開講&受講の決定
↓
3. クラスルームから授業動画と資料にアクセス&質問をする
◦授業動画の配信および資料の配付、質問等の講師とのやりとりはGoogle社が提供する学習管理アプリケーション「Googleクラスルーム」から行います。クラスルームにつきましては、受講決定時に別途招待メールが届きますので、そちらからご参加ください。
◦クラスルームの使い方についてはこちらをご覧ください。
◦授業動画はクラスルームのほか、本ページ下部「授業スケジュール」およびマイページ内「受講状況」からもご視聴いただけます。
◦動画が公開されたときにはメールにて通知が届きます。

授業予定
第1回 2026年5月25日(月)19:00〜
第2回 2026年6月8日(月)19:00〜
第3回 2026年6月22日(月)19:00〜
第4回 2026年7月6日(月)19:00〜
第5回 2026年7月20日(月)19:00〜
第6回 2026年8月3日(月)19:00〜
第7回 2026年8月17日(月)19:00〜
デ・キリコの生涯と作品——形而上絵画時代まで
第2回 2026年6月8日(月)19:00〜
形而上絵画とは何か
第3回 2026年6月22日(月)19:00〜
永遠回帰の図像学
第4回 2026年7月6日(月)19:00〜
「技術への回帰」とエディプス・コンプレックス
第5回 2026年7月20日(月)19:00〜
デ・キリコとシュルレアリスム
第6回 2026年8月3日(月)19:00〜
小説『エブドメロス』
第7回 2026年8月17日(月)19:00〜
20世紀美術史における「神の死」、デ・キリコ、シュルレアリスム
※ 授業の進捗等により予定が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
こんな人におすすめ
美術に興味がある人
美術と哲学・思想の関係に興味がある人
ジョルジョ・デ・キリコに興味がある人
シュルレアリスムに興味がある人
奇妙なイメージ、不思議なイメージに興味がある人
美術と哲学・思想の関係に興味がある人
ジョルジョ・デ・キリコに興味がある人
シュルレアリスムに興味がある人
奇妙なイメージ、不思議なイメージに興味がある人
講師情報

授業スケジュール
次回開催
2026年5月25日 19:00
第1回 デ・キリコの生涯と作品——形而上絵画時代まで
参加可能人数: 無制限2026年6月8日 19:00
第2回 形而上絵画とは何か
2026年6月22日 19:00
第3回 永遠回帰の図像学
2026年7月6日 19:00
第4回 「技術への回帰」とエディプス・コンプレックス
2026年7月20日 19:00
第5回 デ・キリコとシュルレアリスム
2026年8月3日 19:00
第6回 小説『エブドメロス』
2026年8月17日 19:00
第7回 20世紀美術史における「神の死」、デ・キリコ、シュルレアリスム
芸術と思想はいかに結びつくか――デ・キリコにおける形而上絵画・技術への回帰・神の死を軸に
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